『そして、ぼくは旅に出た。 はじまりの森ノースウッズ』

大竹 英洋/著
あすなろ書房/刊
本体1,900円(税別)

「偶然を楽しむこと」の意義

 ノースウッズ。北アメリカ大陸の中央部に広がる湖水地方がこの本の舞台です。

 著者の大竹英洋さんは野生の動物や自然と人との関係を追って撮影を続けている写真家です。大竹さんは1999年よりノースウッズを撮影のフィールドにし、作品をつくり続けています。

 本書では、日本ではあまりなじみのない地、ノースウッズとの出会い、そしてどのようにして写真家へとなっていったのかが冒険談として語られています。初めてカヤックに乗り、湖を幾つも越えながら夢に出てきたオオカミを探しに行く。そして憧れだった写真家ジム・ブランデンバーグのもとへと。

 この本を読んで、写真を撮ることと冒険をすること、そして、それ以外にも普段の生活をもっと大事にするにはどうすれば良いのかなどが、わかったような気がします。

 それは「偶然を楽しむ」ということです。大竹さんがノースウッズに出会ったのも、旅の寄り道で見つけた水鳥の巣も、ある人との繋がりが彼を目的地へと導いたのも、それらのすべての偶然が大竹さんに素晴らしい経験を与えてくれたのが、読んでいてすごく伝わってきます。自然と付き合っていくというのはすべてが自分の思い通りにはいきません。そんな中でどうやって楽しみをみつけていくのか。自然の多い日本で生活をするにはとても大切なことが書かれていると感じました。

 本書に僕が出会ったのも偶然、皆さんがこの書評を読むのも偶然。この偶然を活かして、本書の頁を開く楽しみを充分に味わって貰えればと思います。

(評・自由の森学園高等学校3年 小川 一生)

(月刊MORGENarchive2018)

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